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【結婚指輪】製法や素材による違いを徹底研究!

製法や素材による違いを徹底研究!

はじめに

指輪はその「製法」や「素材」によって、丈夫さ・耐久性・デザイン・仕上がりの印象・着け心地などが全く違ってきます。「製法と素材による違い」を徹底研究する事によって、その違いを分かりやすくご紹介していきます。
本記事の内容をお読みいただくことで、一生身に着ける大切な結婚指輪を選ぶための手助けになればと思います。

目次

1.「製法による違い」について

指輪には、大きく分けて2つの製造方法があります。
それは「鋳造法(ちゅうぞうほう)」と「鍛造法(たんぞうほう)」です。
それぞれの特徴を順にご説明していきます。

1-1.「鋳造法」について

1-1-1.鋳造法とは?

指輪の製法として多く用いられる鋳造法は、「ロスト・ワックス・キャスティング法」とも呼ばれるものです。
基礎となる指輪の原型から型(鋳型)を作り、そこに加熱して溶かした金属を流し込み、冷えて固まった後、型から取り出して仕上げる製法です。

1-1-2.鋳造法の詳しいプロセス

  1. 原型作り
    001_原型作り
    指輪の原型は、主に金属のシルバーで作られます。作り方は下記の2通りです。
    ・金属(シルバー)から直接手作りで作る場合
    ・ワックス(蝋の一種)から作り、シルバーを鋳造して原型にする場合
    (コンピューターで作成するCADデータから、3Dプリンターを使用してのワックス作りは、自由で繊細な形も簡単に作成できることから、現在主流になりつつあります)
  2. ゴム型作り
    アルミニウムの枠に柔らかいシリコンゴムを敷き、その中に原型を置き、更にシリコンゴムをかぶせて原型を挟みます。

    アルミニウムの枠に入れたシリコンゴムをホットプレス機で徐々に加圧・加熱していきます。
    002-1_ゴム型1

    硬くなったシリコンゴムを型が崩れないように段差を付けて、メスで切り開き取り出します。
    002-2_ゴム型2
    これで、ワックスを流入する空間ができたゴム型が完成します
  3. ワックス型作り
    溶けたワックスが入ったワックスポットの注入口にゴム型を当て、ワックスを流し込み固めます。
    003-1_ワックス型1

    溶けたワックスがゴム型の中で固まったら取り出します。
    003-2_ワックス型2
  4. ツリーの製作
    ゴム製の円錐台(ベース)に、複製したワックス型を取り付けます。
    004_ツリー
    湯道(溶解した金属を流し込む経路)に沿ってワックス型を木の枝のように付け、ワックスツリーを作ります。
  5. 鋳型作り
    ワックスツリーをステンレスリングで固定し、埋没剤を流し込んで脱泡します。
    005-1_鋳型1
    005-2_鋳型2

    ワックスツリーのゴムベースを外し、埋没剤の入ったステンレスリングを電気炉に入れ、徐々に温度を上げていきます。
    ツリー状になっているワックス型が溶け、鋳込みをする空洞ができます。
    さらに温度を上げ、ワックスを完全に燃やして埋没剤を焼成し、鋳型を作ります。
  6. 鋳造(キャスティング)
    鋳型の中にできた空洞に、高温で溶解した貴金属を遠心力や圧力を使って強制的に流し込みます。
    006-1_キャスティング1
    006-2_キャスティング2
  7. 冷却後、取り出し
    鋳造後、水中に入れて急冷すると埋没剤が崩れ、鋳造したツリーが表れます。
    007-1_冷却1
    007-2_冷却2
    そして湯道を切り取り、指輪を取り出します。
  8. 仕上げ
    模様やラインの彫り出し、表面のつや出しつや消しの仕上げ、磨き、石留め等をして仕上げをし、製品となります。
    008-1_仕上げ

1-1-3.鋳造法の分かりやすいイメージ

例えば、皆さんがイメージしやすいものでいけば、チョコレート菓子作り。
板チョコを溶かして、型に入れて冷まして固め、好きな形を作っていくというやり方がここでいう「鋳造法」です。指輪以外のものですと、南部鉄器やお寺の鐘、仏像、マンホールなども鋳造法で作られています。
奈良の大仏は世界最大の鋳物の仏像です。

1-1-4.鋳造法のメリット・デメリット

鋳造法のメリットは以下の通りです。

  • 原型を1つ作ってしまえば何度でも正確に複製でき、1度に多くの指輪を短時間で鋳造できる
  • 地金の切削を最小限に抑えられるため、地金のロスが非常に少なく済むためにコストを低く抑えられる
  • 多様なデザインが可能
  • 複雑で繊細なデザインを簡単に作ることができる
  • サイズ直しや修理が容易
  • 製作時間(納期)が早い

また、鋳造法のデメリットは以下の通りです。

  • 金属の合金により冷却スピードが異なる等、内部に「鬆(す)(気泡のこと)」ができやすい
  • 金属密度が粗いため、鍛造法と比べると耐久性がやや劣る(強い衝撃や加えられる力により変形や破損する場合がある)

以上のような特徴から、鋳造法の指輪はこのような方に選ばれています。

  • やわらかく美しいウエーブラインの指輪が好みの方
  • 繊細でかわいらしいデザインの指輪が欲しい方
  • 個性的で複雑なデザインで自分を表現したい方
  • リーズナブルな価格のものをお探しの方

1-2.「鍛造法」について

1-2-1.鍛造法とは?

読んで字のごとく、「鍛えて作る製法」です。
金属を何度もたたいたり圧力を加えたりして鍛えて作る製法ですが、その圧力のかけ方や作業の手順、機械の種類などはメーカーによって異なります。

また、その方法は2つに分かれています。

  • 金属をリングの形状に打ち抜き、成型する方法(シームレス)
  • 棒状の金属を丸めてつなぎ合わせて作る方法

1-2-2.鍛造法の詳しいプロセス

1-2-2-1.つなぎ目のない構造(シームレス)
  1. 金属プレート作り
    加熱して溶かした金属から、板状の金属プレートを作ります。金属プレート作り
  2. 圧延
    金属プレートをローラーで圧縮して引き延ばします。圧延
    (メーカーによっては、金属プレートを圧力プレス機にかけたり、ハンマーでたたいたりして鍛えてからローラーにかけます。圧力の数値もさまざまです。)
  3. ワッシャー作り
    ローラーで圧延した金属にプレス機でさらに圧力を加え、ドーナツ型に打ち抜き「ワッシャー(指輪の型抜きの状態)」を作ります。
    ワッシャー作り
  4. ワッシャーの絞り込み(圧縮)
    ワッシャーに、プレス機でさらに圧力を加えてドーナツの内側円周を広げます。外側の円周をすぼめるようにして絞り込み、仕上げたい指輪のサイズに加圧形成していきます。
    圧縮
  5. 切削形成
    鍛造で作られた強い地金を、コンピューター制御されたダイヤモンドカッターや超硬鋼の刃などを用いて、成型したい指輪のデザイン(幅や厚み、外周・内周のカーブライン)になるように高速回転させながら、形を削り出していきます。切削形成
  6. 仕上げ
    模様やラインの削り出し、表面のつや出し・つや消しの仕上げ、磨き、石留めなどをして仕上げをし、製品となります。
    仕上げ
1-2-2-2.つなぎ合わせて作る製法

つなぎ合わせて作る鍛造製法の指輪は、「圧延」の方法が大きく分けて2つあります。
「機械による圧延」と「全て手作業による圧延」です。

♦「機械法」

  1. 金属プレート作り
    シームレス法と同じく、溶かした金属から板状の金属プレートを作ります。
    金属プレート作り
  2. 圧延
    シームレス法と同じく、金属プレートをローラーで圧延します。
    圧延
  3. 棒状の板材に切断
    圧延した金属を指輪のサイズに合わせて、棒状に切断します。
  4. 丸め・ろう付け
    鉄製の丸い芯金に巻きつけるようにして丸め、棒状だった金属にカーブを付けて指輪状に形成していき、合わせ目をろう付け(溶接)します。
    ろう付け
  5. 仕上げ
    模様やラインの削り出し、表面のつや出し・つや消しの仕上げ、磨き、石留め等をして仕上げます。
    仕上げ

♦「手作業」

  1. 棒状の金属板材作り
    加熱して溶かした金属から、棒状の金属板材を作ります。
    棒状金属
  2. 圧延
    棒状の金属板材を加熱して圧縮を繰り返し、金属を鍛えていきます。
    金属鍛錬
  3. サイズに合わせてカット
    圧延した金属板材を指輪のサイズに合わせてカットします。
  4. 丸め・ろう付け
    鉄製の丸い芯金に巻きつけるようにして丸め、棒状だった金属にカーブを付けて指輪状に形成していき、合わせ目をろう付け(溶接)します。
    ろう付け
  5. 仕上げ
    模様やラインの削り出し、表面のつや出し・つや消しの仕上げ、磨き、石留め等をして仕上げます。
    仕上げ

1-2-3.鍛造法の分かりやすいイメージ

鋳造法(ちゅうぞうほう)で造られた指輪をおにぎりやお寿司のシャリだと例えるなら、鍛造法(たんぞうほう)で作る指輪は「つき固めたお餅」のようなものです。
鍛造法は、日本古来の刀鍛冶の技法でもあります。
鍛造法の製品といえば、日本刀、ゴルフクラブ、自動車のホイール、航空機ジェットエンジンの回転部品や胴体フレームなど、非常に重要な部品に使われています。

1-2-4.鍛造法のメリット・デメリット

鍛造法のメリットは以下の通りです。

  • 何度も圧延を繰り返し練り込むことで、金属の結晶密度が高く、強度・硬度に優れている
  • 密度が高くずっしりとした重厚感がある
  • 鋳造法と比べて変形しにくい
  • 細身の指輪でも強度が出せる
  • 継ぎ目のないシームレス構造はより強度が増す
  • 高密度の地金を精密機械によって削り出すことで、鋳造よりシャープなデザインが実現可能
  • コンピューター制御の高速回転でリングを削り出すため、ほぼ真円に近い指輪が造りだせる
  • 地金の密度が高く、表面の滑らかな質感が生まれるため着け心地が良い

また、鍛造法のデメリットは以下の通りです。

  • 製造に時間と手間が必要なため、コストがかかる
  • 繊細で複雑なデザインを作るのには不向き
  • 継ぎ目のないシームレス構造はサイズ直しが難しい

以上の特徴から、鍛造法の指輪はこのような方に選ばれています。

  • 一生着け続ける結婚指輪は、丈夫で安心して着けられるものを選びたいという方
  • 幅広でかっこいい指輪をお探しの方
  • 重厚感のある渋いデザインで他の人に差を付けたい方
  • モノづくりにこだわり、品質を重視したい方
  • シャープな印象のデザインが好みの方

2.「指輪の素材」について

2-1.指輪の素材って何があるの?

指輪の素材としてふさわしいものは「貴金属」です。
ジュエリーとして使われる「貴金属」には何かあるのでしょうか?ご紹介していきます。

2-1-1.「貴金属」とは?

貴金属とは、文字通り「貴重な金属」のことをいいます。
その特性は、科学的に安定していて加工性に優れ、資源的にも希少であることです。このような特性をもつ貴金属は、一生身に着ける結婚指輪の素材として、必要な要件を満たすものだと言えるでしょう。

2-1-2.貴金属の種類

「ゴールド(金)」「プラチナ」「シルバー(銀)」「パラジウム」の4種類とその合金は、ISO(国際標準規格)やJIS(日本工業規格)によりジュエリー用貴金属として定められ、品位区分が設けられています。

一般的に貴金属と称されるのは、金(Au)、銀(Ag)、プラチナ(Pt)、そしてプラチナ族(白金族)と呼ばれるパラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)を合わせた計8元素です。
パラジウム、ルテニウム、イリジウムは割り金として用いられ、ロジウムはメッキの材料として用いられることが多く、オスミウムは現在ではジュエリーにもメッキにも使用されていません。

3.「素材による違い」について

3-1.ゴールド(金)について

3-1-1.純金の特徴

ゴールドは、純金の状態では酸素やほとんどの化学物質に対して化学反応を起こさないので、空気中や水中では永遠に変化せず、さびることもありません(ただし、王水(おうすい)と呼ばれる濃硝酸と濃塩酸の混合液には溶けることが分かっています)。
純金は非常に軟らかく延びやすく、1gのゴールドを約3,000mにまで伸ばすことができます。

これまでの総採掘量 約16万5,000t(オリンピックプール約2.6杯分)
推定埋蔵量 約5万t
1tの金鉱石から採れるゴールドの量 平均3~5g
融点 1,064℃
比重 19.3

3-1-2.金合金の特徴

金合金とは、純金に別の金属を加え、それらを溶かして混ぜ合わせたものです。
金合金を作るために加える他の金属としては、「銀」「銅」「パラジウム」などが使われています。

K(カラット) K24 K22 K18 K14 K10
千分率品位 999 916 750 585 416

貴金属合金の主になる金属の純度を「品位」といいます。(質量・含有率とも呼ぶ)
それを千分率やK(カラット)で表しますが、K表示は金特有のものです。

3-1-3.金合金のメリット

金合金のメリットは、以下の通りです。

  • 純金のままでは軟らかいため、合金にすることで硬度・強度・耐摩耗性が高くなる
  • ゴールドの比重は鉄の2.5倍も重いため、軽い金属と合金することで軽量化できコストを抑えられる
  • ゴールドは、合金する金属の種類と割合によって、大幅に色合いを変えることができる
  • 経時軟化を防げる(※)

※経時軟化とは?
純金などの純金属は、熱処理をして加工すると、その後の硬度が時間の経過とともに軟らかくなる性質を持っています。常温ではゆっくりと、夏場など温度が高い場合や強く加工されたものはスピードが速くなります。原子の配列が元の状態に戻ろうとするために起こるもので、これを経時軟化といいます。
純金に微量の添加物を加えて硬度を高め、熱処理をしても軟化しにくく経時軟化のない高品位・硬化ゴールドも開発されてはいますが、指輪の素材としては一般的ではありません。

ビッカーズ硬さ(硬度) 比重
K24(純金) 25~70Hv 19.3
K18(金合金) 平均130~230Hv 平均15.5

※ビッカーズ硬さ(硬度):金属の硬さを表わす単位。数値の大きい方が硬い。
※比重:物質の単位体積あたりの質量

☆ビッカーズ硬度は、試験片の上に四角すいのダイヤモンド圧子を一定の力で押し付け、そのくぼみ面積から求める硬度。最も硬い貴金属合金では、450Hv程度の数値が出る。参考に、人の爪は20~30Hv、ステンレス鋼製のナイフは280Hv程度。

3-1-4.ゴールドのカラーバリエーション

金合金は、その割り金の種類と割合(%)によってさまざまなカラーバリエーションが生まれることから、「カラーゴールド」とも呼ばれます。カラーごとによるその主な成分配合は、メーカーによっても異なります。

記号・名称 主な成分(元素記号) 特徴
WG
ホワイトゴールド
金Au
パラジウムPd、銀Ag、銅Cu
割り金の主成分としてパラジウムが使用された白色の金合金
RDG
レッドゴールド
ローズゴールド
金Au
銅Cu、銀Ag
割り金の銅比率が多い、赤みのある金合金
GRG
グリーンゴールド
金Ag
銀Ag、銅Cu
割り金の銀比率が多い、青味のある金合金
PG
ピンクゴールド
金Ag
銅Cu、銀Ag、パラジウムPd
割り金の銅比率が多く、パラジウムを含んだやや赤みのある金合金
YG
イエローゴールド
金Ag
銀Ag、銅Cu
割り金の銀と銅の比率がほぼ同等の黄色みの金合金

※WG(ホワイトゴールド)は、メーカーによっては黄色みの金合金にロジウムコーティングメッキが施されている指輪もあり、その場合は経年変化でコーティングが剥げてきてしまいます。コーティングの施されていない地金本体の色相が白色のホワイトゴールドなのか、購入にご確認されることをおすすめします。

3-1-5.指輪に用いる際のメリット・デメリット

ゴールドを指輪に用いる際のメリットは以下の通りです。

  • カラーゴールドを使用することで、単色以外にも2色・3色使いのデザインバリエーションが広がる
  • カラーゴールドの色合いはどれも肌なじみがよく、着けた時に自然な印象を与える
  • 肌なじみの良さから、どんなファッションやスタイルにもよく合う
  • ホワイトゴールドは色調がプラチナと似ているが、プラチナよりも軽く身に着けやすく、コストが抑えられる

また、ゴールドを指輪に用いる際のデメリットは以下の通りです。

  • 割り金に銀や銅が含まれているので、変色する場合がある
  • プラチナの結婚指輪が主流の日本では、イエローやピンクゴールド等の色味を身に着けづらいと考える人もいる

以上の特徴から、ゴールドの指輪はこのような方に選ばれています。

  • 普段の自分のファッション感覚だと、一般的な銀色の結婚指輪では物足りないと感じる方
  • みんなと同じはちょっと……一目置かれるような存在の指輪を選びたいという方
  • イエローゴールドは、クール系ファッションが好みの方に人気
  • ピンクゴールドは、ガーリー系やナチュラル系ファッションが好みの方に人気
  • 2色使いのカラーゴールド等は、普段身に着けているアクセサリーと合わせやすいものを選びたい方に人気

3-2.プラチナについて

3-2-1.プラチナの特徴

プラチナの科学的な安定性の高さは、貴金属中屈指のもの。大気中、高温でも変色せず、酸にもアルカリにも溶けることはありません。水銀とも化学反応を起こしません(金同様、王水は例外)。
現在でも、プラチナを鉱石から製錬するには長い精製工程と高度な技術を要します。
色調は白色系ですが、銀のような白さとは違い、やや青みがかった黒っぽい渋みのある独特の白さが特徴です。
属性・延性に優れ、特筆できるのは粘り強い性質です。その粘り強さによって、小さな爪でもしっかり石留めできることから、さまざまな宝石をセットするのに好適な素材なのです。
また、工業的にも利用されていて、中でも触媒(※)として多く用いられています(石油精製をはじめ、自動車の排ガス浄化触媒など多岐にわたる)。さらにはハイテク分野など、各種工業製品にも生かされています。

※触媒(しょくばい)とは、それ自身は化学変化を起こさないが、他の物質の化学反応を促進、または抑制する物質のことをいう。

これまでの総採掘量 約6,000t
推定埋蔵量 約2万t
鉱石1tに含まれるプラチナの量
(プラチナ鉱石には、プラチナ族6元素が含まれる)
約3g
融点 1,769℃
比重 21.45

3-2-2.プラチナ合金の特徴

プラチナ合金とは、プラチナに別の金属を加えて、それらを溶かして混ぜ合わせたものです。
プラチナ合金の割り金として最もポピュラーな金属は、パラジウムです。それは、プラチナとパラジウムが互いに全組織で溶け合うことができ、合金を作るのにとても相性がいいためです。
プラチナとパラジウムの二元合金をベースにして、ルテニウムやイリジウム、あるいは銅などが少量加えられます。その他の微量元素が割り金として加えられることもあります。

3-2-3.プラチナ合金のメリット

プラチナ合金のメリットは以下の通りです。

  • 純プラチナは軟らかいが、合金にすることで硬さを増し加工性を高める効果がある
  • プラチナ合金で代表的なPt900(プラチナ:パラジウム=9:1の合金)は高温になっても酸化することがない
  • 上記のPt900合金は、赤熱した状態でも鎚打ちによって自由に形を変形させることができ、鍛造も容易
  • 割り金に、パラジウムの他にルテニウムあるいは銅を加えたPt900は、硬さや切削性、そして加工性が高い
  • ネックレスチェーンによく使われるPt850(プラチナ:パラジウムや銅=8.5:1.5)は、硬さ・切削性・製鎖性が高い

プラチナの品位は、以下のように表わされます。(千分率比)

Pt999 純プラチナが、99.9%以上
Pt950 純プラチナが、95.0%以上
Pt900 純プラチナが、90.0%以上
Pt850 純プラチナが、85.0%以上

※千分率で表す場合、純プラチナであっても景品表示法により“Pt1000”の表示は用いることができません。
そのため、最も高い品位の千分率表示は“Pt999”となります。

3-2-4.ハードプラチナって何?

ハードプラチナとは、一般的なプラチナ合金の硬さに対して、メーカー各社の独自開発によって硬度を高めて製造されたものです。高純度のプラチナ合金ながら、硬度の高さとキズの付きにくさをうたった素材です。

ビッカーズ硬さ(硬度)
一般的なプラチナ合金 平均 60~130Hv
ハードプラチナ 平均 150~200Hv

※特に決まりがないため、メーカー各社でその定義も異なります。割り金の成分配合だけではなく、硬化処理された地金を使用したものや鍛造法で製作したものをハードプラチナと呼ぶこともあります。中にはプラチナ900合金のことをプラチナ950合金よりも硬いという意味でそう呼んでいるメーカーもあるようです。

素材の硬さは重要ですが、どんなに硬い貴金属の指輪でも必ずキズは付いてしまいます。
使い始めてから何年も経つと、ハードプラチナと通常のプラチナの違いはほとんど見分けがつかなくなります。
指輪をキレイに使っている人は、スポーツをする時や重たい荷物を持つようなときには外したり、時折、磨きやクリーニングなどのアフターメンテナンスをしたりしてもらっているようです。

3-2-5.指輪に用いる際のメリット・デメリット

プラチナを指輪に用いる際のメリットは以下の通りです。

  • 変色、腐食の心配が要らない
  • 温泉に入っても変色しないので、安心して身に着けられる
  • 重厚感があり、身に着ける喜びや満足感が高い
  • 光沢感のある白色には人を魅了する審美性がある
  • 希少価値の高さからも満足度の高い素材である

唯一のデメリットは「他の貴金属に比べて価格が高い」ということです。

以上の特徴から、プラチナはこのような方に人気があります。

  • 両親もプラチナの指輪をしているという方
  • プラチナの純白のイメージから「結婚の証」にふさわしいと考える方
  • 結婚指輪と言えば「プラチナ」というイメージを大事にしたい方
  • 価値の高い素材の指輪を選びたい方

3-3.シルバー(銀)について

3-3-1.純銀の特徴

純銀は、貴金属の中での希少価値や科学的な安定性は、最下位に位置付けられます。
白色の程度は高く、可視光線の反射率も高くキレイで輝きも大きいのですが、大気中で徐々に変色するのが欠点です。
変色の原因は、よく「酸化(サビ)」と誤解されますが、正しくは硫化(りゅうか)という反応です。
これは、水分や硫化水素等と接触して、表面に硫化銀ができる現象です。硫黄分に敏感なので、硫黄泉は厳禁です。なお、輪ゴムや温かい卵の卵黄に触れても変色につながることがあります。

融点 960.8℃
比重 10.5

3-3-2.銀合金の特徴

銀合金は、銀(Ag)と銅(Cu)の合金が最も多く、銀92.5%と銅7.5%の二元合金のことを「スターリングシルバー」と呼びます。
スターリングシルバーの特徴は、200~300℃の加熱処理で著しく硬化する「時効硬化性」に優れていることです。時効硬化とは、時間の経過とともに金属が硬くなっていく現象のことです。スターリングシルバーはその他の銀合金と比べて硬度が高いため、ファッションジュエリーやテーブルウエア、調度品に多く用いられています。

3-4.パラジウムについて

3-4-1.パラジウムの特徴

パラジウムはプラチナ族に属する白色金属で、プラチナ合金の主な割り金として使用されています。
近年では指輪の主な素材としても用いられており、その際の品位は主にパラジウム(Pd)950(95.0%以上パラジウムを使用)となっています。色調も金属性もプラチナと類似していますが、プラチナに比べ比重が軽いのが特徴です。
虫歯治療に使われる銀歯や、工業用としては自動車の排ガス浄化の触媒としても利用され、相場も以前より上がってきています。

融点 1,554℃
比重 12.02

4.アレルギーについて

4-1.皮膚に表れるアレルギーについて

人体が皮膚に有害と判断する物質が侵入すると、リンパ球がこれを攻撃して死滅させ液体にしてしまいます。これが小さな水泡になったりして、かゆくなるのが「かぶれ」です。
リンパ球がそのかぶれとなった有害物質(アレルゲン)を覚えていて、再び同じ物質が侵入したときに、直ちに反応が起こることを「アレルギー」といいます。

4-2.金属アレルギーとは?

金属は普通、水には溶けませんが、汗や体液(ピアスの穴をあける際などに傷口から出る液)には、ごく微量に溶ける場合があります。これを「金属のイオン化」といいます。
イオン化した金属が身体のタンパク質と作用して、本来のタンパク質と違う形になってしまうため、身体がこれを拒絶して「かぶれ」や「炎症」を起こします。これが「金属アレルギー」です。
炎症が治っても、同じ金属に再び触れるとその度にかぶれや炎症を繰り返します。

4-3.アレルギーを起こしやすい金属

金属には、アレルギーを起こしやすいものと起こしにくいものがあります。

4-3-1.アレルギーを起こしやすい金属

 

順位 金属名 皮膚科外来件数
1 水銀 188
2 ニッケル 119
2 スズ 119
4 コバルト 118
5 クロム 99
6 パラジウム 70
7 プラチナ 45
8 26
9 亜鉛 19
9 19
11 カドミウム 11
12 マンガン 6
13 アンチモン 1

(1992年文部科学省研究資料より引用)

4-3-2.アレルギーを起こしにくい金属

アルミニウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、銀、チタン、鉄

意外にも銀(シルバー)はアレルギーを起こしにくい金属ですが、これは純銀の場合です。銀合金に含まれる割り金の種類によってアレルギーが起こる場合があります。よって、シルバーアクセサリーなどで金属アレルギー反応が出たときは、割り金の成分も確かめる必要があります。

5.お手入れについて

貴金属でできた指輪は、その製法や素材を合金にすることなどで、強度・硬度が高められています。
しかし、「基本的にデリケートなもの」であることをまず認識しておきましょう。

<具体的なお手入れ方法>

  • なるべく硬いものとの接触を避けて保管する
    保管する際は必ずケースに収納しましょう。携帯する際にもケースやポーチ、小袋などを利用し、指輪同士や他のものと接触しないようにしましょう。
  • 汚れは拭き取って保管する
    汗、化粧品、ほこりなど、貴金属が汚れる原因は多種多様です。しばらく身に着けず保管する場合は汚れを拭き取り、洗浄してから収納するようにしましょう。
  • ご家庭での簡単な洗浄方法
    ぬるま湯で薄めた中性洗剤に浸けると、汚れがかなり落ちます。細かい部分は柔らかいブラシで軽くこするとキレイになります。
    その後、必ず真水でよくすすいでから柔らかな布で水分を拭き取り、十分に乾燥させることが大切です。
  • 入浴、温泉について
    入浴剤を使用したお風呂や温泉は、泉質にもよりますが、純粋のゴールドやプラチナは反応しなくても、合金に使用されている割り金に反応して変色したりすることがあります。
    特に銀は硫黄分に敏感なためご注意ください(もし変色した場合でも、専門店での洗浄処理で元の色に戻ります)。

まとめ

結婚指輪はおふたりが夫婦である証・絆の象徴であり、一生身に着ける大切な指輪です。
結婚指輪をふと眺めるたびに指輪を選んだ日の思い出がよみがえり、家族がいる幸せをしみじみと感じることができます。そんな大切な指輪選びで後悔しないためには、まず指輪の特性についてよく知ることが重要ではないでしょうか。
「製法」×「素材」、どちらも非常に大切な要素だといえます。
これらを知っていただいた上で、おふたりの好みやこだわりとともに結婚指輪選びを楽しんでいただければ幸いです。