はじめに
日本で結婚指輪といえばプラチナが主流で、左手の薬指に着けるのが当然のことと考えられています。「世界共通の常識でしょ?」そう思っている人も多くいますが、世界を見渡すと、国や地域によって結婚指輪に対する価値観やしきたりは大きく異なっているようです。
そればかりか、日本では当り前の振る舞いも国が違えばタブーとなってしまうことも。
今回は世界の結婚指輪事情がどうなっているか、文化の違いと共にチェックしましょう。
目次
1. 世界的にはゴールドが主流
結婚指輪の素材は、日本ではプラチナが主流です。「ゼクシイ結婚トレンド調査2018」によると、結婚したカップルのうち男性は81%、女性は79%がプラチナを選んでいます。
ゼクシイ結婚トレンド調査2018(p.92)
日本では圧倒的な人気を博しているプラチナですが、海外ではゴールドが主流の国が多数あります。特にヨーロッパやアメリカではイエローゴールドやホワイトゴールドが主流で、イギリス王室のキャサリン妃やメーガン妃がイエローゴールドの結婚指輪を着けていることからも、その人気ぶりが分かります。
1-1.ゴールドの指輪と歴史の関係
結婚指輪の歴史は9世紀、当時のローマ教皇ニコラウス1世が指輪を結婚の証として認めたことが始まりといわれています。1027年発表のミュール『ローマ結婚指輪の起源』の記録の中に「花婿は花嫁に金の指輪を、花嫁は花婿に鉄の指輪を渡し交換している」と記されていて、徐々に結婚指輪の交換が広まっていきました。その頃から金の指輪は結婚の約束を交わした証として大切に扱われていたことが分かります。
欧米でゴールドが一般的に選ばれるのも、約1,000年にわたって贈り合っていた伝統が、そのまま今に引き継がれているといえるでしょう。
1-2.日本ではプラチナが人気の理由
プラチナはゴールドと比べても生産量が少なく、希少性の高い金属です。日本でプラチナが知られるようになったのは江戸時代末期のことで、幕府が派遣した使節団がロシアでプラチナの塊を見たのが始まりといわれています。
日本で広く知れ渡るようになったきっかけは、上皇后美智子陛下がご成婚時にお着けになったティアラにあります。プラチナにダイヤモンドが装飾されたティアラはまばゆい輝きと上品さを兼ねそろえ、それをテレビで目の当たりにした女性たちはプラチナに対する憧れを強く抱くようになりました。
また、白色に輝くプラチナはゴールドの光よりも控えめで、品よく手元を華やかにしてくれます。そこに「自己を前面に押し出すことに抵抗を持ち、周りとの調和を大切にする」国民性がピッタリと合いました。派手さはなくとも美しく手元を飾ることができるプラチナは、日本人の精神性とも合致して不動の人気を博していったのです。
2.ダイヤモンドだけじゃない?!ヨーロッパでは自分らしさを重視
日本では、結婚指輪の石の種類はダイヤモンドが主流です。「ゼクシイ結婚トレンド調査2018」によると、妻の結婚指輪の石の種類は「ダイヤモンド」が71%で、2位が「石はついていない」の26%だったことからも、その圧倒的な人気がうかがい知れます。
ゼクシイ結婚トレンド調査2018(p.94)
いっぽう、ヨーロッパでは事情が違うようです。
個人の自由な発想や価値観、脈々と受け継がれてきた伝統を大切にするヨーロッパでは、他者の考え方にとらわれることなく、自分らしさが重視されます。
それは結婚指輪においても例外ではありません。ダイヤモンドにこだわらず、ルビーやエメラルド、サファイヤなどの指輪を選ぶ人も多くいます。
そのほか、親や祖父母の代から受け継がれた指輪を着ける人も珍しくありません。
イギリスのウィリアム王子がキャサリン妃に贈った婚約指輪が、母ダイアナ妃がチャールズ皇太子から受け取った指輪であることは有名な話です。
3.右手に結婚指輪をはめる国もある
結婚指輪は「左手の薬指に着けるもの」という考え方も、世界的な常識ではありません。
右手に着けるのが一般的な国もあれば、左手薬指に着ける指輪には全く違う意味が込められている国もあります。
3-1.左手の薬指にはめる由来
そもそも、結婚指輪を左手にはめるしきたりはどこから来たのでしょうか?その由来は歴史からひもとくことができます。
その昔、古代ギリシャでは心臓と左手薬指が太い血管でつながっていると考えられていました。人の命と直結する指に指輪をはめることで、互いの心を強く結びつけていたということです。
その風習が現在でも受け継がれ、遠く離れた日本でも結婚指輪は当然のように左手薬指に着けられるようになりました。
3-2.ヨーロッパの一部では右手に結婚指輪
ドイツやオーストリア、ポーランド、ブルガリア、ロシア、ウクライナなどの国では結婚指輪を右手に着ける習慣があります。
これは聖書の中で、右手には「正義」や「権力」が宿るとされていて、永遠の愛の象徴である結婚指輪を右手に着けることによって幸運がもたらされると考えられているからです。
ちなみにドイツやポーランド、ウクライナなどでは、婚約指輪は左手の薬指に着ける習慣があります。
ただし、上記の国であっても「利き手である右手に指輪を着けると仕事や家事の邪魔になる」と考えて左手に着ける人もいます。
日本人は「型」や「しきたり」を重んじる文化があるため「結婚指輪は左手薬指」という概念にとらわれがちですが、欧米諸国では本人の意思が最優先です。その分指輪の着け方も自由度が高いといえるでしょう。
3-3.ロシアでは左手薬指は離婚や死別の意味もある
ロシアでは、結婚指輪を右手薬指に着けるという話だけではありません。左手薬指に着ける指輪には別の意味が加わります。パートナーと離婚や死別したことを示すために左手薬指に指輪を着ける習慣があるのです。
左手薬指に指輪を着けているロシア人に対して、日本人と同じ感覚でコミュニケーションを取ってしまうと失礼に当たる可能性が高いため、注意が必要です。
4.インドや東南アジアの一部では足にはめる
インドや東南アジアの一部では、結婚指輪は足の指にはめます。これらの国は気温が高く、靴下や靴で足の指を覆うことが少ないという習慣も関係しているのでしょう。
また、多くのインド人が信仰するイスラム教やヒンズー教では、左手は「不浄の手」とされています。大切な結婚指輪を左手に着けるなど、もってのほかでしょう。ちなみにインドでは、結婚の証として指輪よりもネックレスを着ける方が一般的な習慣として浸透しています。
4-1.左手でやってはいけないNG行為
先ほども述べたように、インドをはじめとするイスラム教やヒンズー教の人たちにとって右手は「神聖な手」、左手は「不浄の手」とされています。
日本では当たり前のこととして無意識のうちに取ってしまう振る舞いの中にも、イスラム教やヒンズー教の人にとっては失礼に当たる場合があります。
例えば
・左手で握手する
・左手で物を渡す
・左手で料理を取る
などは相手に不快な思いをさせてしまうため控えましょう。
時代の波とともに、日本国内でも外国人は増え続けています。
文化の違いによるNG行為を知ることで、グローバル社会にも備えておけますね。
まとめ
結婚指輪は左手に着けるもの……日本では当たり前のこの習慣も、国が違えば考え方が全く違うことが分かりました。
世界を見渡すと結婚指輪に対する価値観もさまざまで、固定概念にとらわれていた自分に気づかされます。
多様化の進む時代、しきたりを重んじるのも良し、自由な発想で新しい結婚指輪の着け方を見つけるのも良し。自分たちらしいスタイルで、もっと指輪を楽しむことができたら最高ですね。